同じ場所で撮ったはずなのに、誰かの写真は立体的で物語を感じる。
それは“前景”と“奥行き”を意識しているかどうかの違いかもしれません。
写真の中に「深さ」があると、見る人の視線が写真の中を旅し始めます。
被写体、背景、そしてその間にある空気。
今回は、そんな 写真の中に物語を生み出す「前景と奥行き」の作り方 を紹介します。
なぜ写真に「前景」と「奥行き」が必要なのか

旅先で撮った風景を見返したとき、「なんだか平面的だな…」と感じたことはありませんか?
その多くは、“前景がない”ことが原因です。
前景とは被写体の手前にある要素、奥行きとは写真の中に“距離と空間”を感じさせる構成のことです。
前景が加わることで、写真に奥行き・ストーリー・空気感が生まれます。
たとえば、
- 海辺なら波打ち際の石や足跡を入れる
- 街角なら道端の花や標識を少し写す
- 寺院や市場なら手前を歩く人の影を取り込む
こうした“少しの前景”があるだけで、写真に物語が宿るのです。
前景を入れると写真に“物語”が生まれる理由

被写体と背景をつなぐ橋渡し
前景は、被写体と背景をつなぐ橋のような存在です。
手前に花や窓枠を入れるだけで、視線が奥の主題へと流れ、写真の中で物語が展開していきます。
見る人の視線を導く効果
人の目は自然に 「手前 → 中間 → 奥」 と動きます。
前景を入れることで、視線を誘導して写真を“読む”ように見せられるのです。
まるで一枚の中に「始まり」→「中盤」→「結末」が存在しているような感覚になります。
奥行きを感じさせる構図の作り方

遠近感を強調するラインを探す
道路・川・フェンス・建物の並びなど、奥へ伸びる線(Leading Line)を構図に入れると、それだけで遠近感と立体感が生まれます。
コツは、線を斜め方向に配置することで、写真に流れと広がりを感じさせることができます。
明暗とボケを活かす
- 被写体を明るく、背景を少し暗く落とす
- 絞りを開け(F2.8前後)て背景をぼかすと距離感が出る
- F8〜F11に絞れば手前から奥までシャープに写る
撮りたい「距離感」と「雰囲気」に合わせて、絞り値を選ぶのがポイントです。
前景と奥行きを同時に意識する撮影テクニック

広角レンズを使う
前景と奥行きを同時に入れたいなら、広角レンズ(24mm以下)が効果的です。
広角は被写体との距離を強調し、手前から奥への流れを作り出します。
街並みを広角で撮ると、石畳・歩行者・建物がそれぞれ“物語の登場人物”のように写ります。
絞りと距離感のバランス
被写体との距離を近づけるほど前景の存在感が増します。
絞りを F4〜F8 に設定すれば、主題と背景の両方が自然に写ります。
ポイントは、「前景:主題:背景=1:2:3」の比率で構図を作ると、バランスが美しくなります。
ピントを主題の手前に置く
あえてピントを主題より少し手前に置くことで、目線がピント位置から奥へ自然に流れます。
これが「視覚的な奥行き」を感じさせるコツです。
実際の撮影シーン別の例

街角スナップで前景を活かす
バンコクの美術館で撮影したとき、私はあえて入口手前の壁と左右の作品を手前に入れて撮りました。
その壁がフレームの一部となり、奥の鳥の作品をより際立たせてくれます。
前景は“見せる”だけでなく、“隠す”ことで空気を作ることもできるのです。
旅先の風景で奥行きを出す
- 海岸では波や岩、足跡を前景に入れる
- 山の風景では木々や柵、道のラインを構図に入れる
それだけで、写真が一気に立体的でリアルになります。
ポートレートや静物でストーリー性を演出
人物を撮るとき、手前にボケた草花や窓枠を入れると、“覗き見たような奥行き”が生まれます。
静物写真でも、小物を手前に置くだけで主題が引き立ち、「どんなシーンなのか」を想像させる力が生まれます。
まとめ:写真に奥行きを作ることは「物語を作ること」
前景と奥行きは、ただの構図テクニックではありません。
それは、写真に物語を吹き込むための要素です。
前景 → 写真の導入、被写体 → 主題、奥行き → 余韻
この三つが揃ったとき、写真はただの記録ではなく、見る人の心を動かす作品になります。
旅先でシャッターを切るとき、少しだけ手前の世界を意識してみてください。
その一枚には、あなたがその場で感じた空気・温度・時間がしっかり写り込みます。
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